人は誰しも、大きな変化や新たな挑戦に直面する時、「本当にこれでいいのだろうか」と迷ったり、不安で前に進めなかったりすることがあるのではないでしょうか。
その感情は誰にでもある自然なものだと思います。
只、その一歩を踏み出せるかどうかで、その後の結果やもしかしたら人生にも大きな影響をもたらしたりするかもしれません。
あの時、勇気を出してやっていればとか、何でやらなかったんだろうと後悔することもあるのではないでしょうか?
どうしてなかなか踏み出せないのか、その原因やどうすればその「一歩」を踏み出せるのかを、カウンセラー視点で考えていきます。
本来人間の脳は変化を「危険」として捉える傾向があります。
それは人間が進化する過程で、未知のものを避けて安全を確保してきた結果だと言われています。
不安や恐怖を感じるのは、脳が「これまでの安全な状態を維持したい」と考える防衛反応(防衛機制)の一つです。
例えば、転職を考える人が「失敗したらどうしよう」と感じるのは、「現在の状態(安定)」を守るために脳が不安を作り出しているのです。
不安は誰もが普通に経験する神経質、心配、困惑の感情で、特に不安を感じやすい人の特徴として、「真面目な人」「怖がりな人」「自分に自信を持てない人」だったりします。
「真面目な人」は理想を高く設定することが多いため、それを達成するために物事を過度に考え込む傾向があります。
「怖がりな人」の脳内では、感情を感じる扁桃体という部位が活発に働き、恐怖などの負の感情が誘発されると考えられています。
そのため、周囲の人の視線や出来事にネガティブに反応してしまう傾向にあり、いろんな場面で不快感や危機感といった感情が発生しやすく、不安を感じやすいと言われています。
「自分に自信を持てない人」はネガティブな思考をすることが習慣になっていることが多く、さまざまなことを悪い方向に考えがちになると言えます。
これらの不安を感じる原因としては、自分の性格や思考など自身に由来する要素により生じる内的要因があり、自分を責めやすい気質や物事を否定的に捉えやすい性質があります。
また、社会的な立場や周囲の環境など外部の要素によって生じる外的要因があり、人間関係の悪さや過去のトラウマといった自身を取り巻く環境に影響を受けている場合もあります。
さまざまな要因が絡み合って起きる不安の感情、果たしてそこに明確な根拠があるのでしょうか?
明確な根拠がないとすれば、不安な思いを考えれば考えるほど不安な感情の迷路に迷い込んで抜け出せなくなってしまいます。
①「自分の感情をそのまま受け入れる」
不安や恐れを感じるのは、決して悪いことではありません。
それらの感情を否定せず、「今、自分は不安を感じているのだな」と気づき、受け止めることが重要です。
客観的、俯瞰的に自分の今の状況を見つめてみます(メタ認知)。
認知行動療法で「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)」という、今この瞬間自分の中にある思考や感情を受け入れながら、不快な感情を無理に取り除こうとせず、それを受容しながら自分が本当に大切にしたい価値に基づいて行動することを推奨します。
例えば、 あなたが長年の会社員生活を辞めて起業したいと考えていたします。
もし順調に集客が出来ず「収入が不安定になったらどうしよう」と恐怖を感じていました。
カウンセリングの中で、Aさんは「恐怖を感じること自体は、自分がこの挑戦を本気で考えている証拠なんだ」と受け入れることができました。
その結果、恐怖に押しつぶされることなく、具体的な計画を立てて始めることができたのです。
②小さな成功体験を積み重ねる
大きな一歩を踏み出すことが難しい場合、まずは「小さな一歩」を試みるのが効果的です。
「スモールステップ」という考え方で、心理学者バラス・スキナーが提唱した理論で、目標を細分化して小さな段階的行動を積み重ねることで最終目標に近づく手法で、小さなことからコツコツとというイメージで進めます。
私ごとで恐縮ですが、30代の頃トライアスロンを趣味としてやっていました。
それほどメジャーな競技ではありませんが、スイム+バイク(自転車)+ランニングの三種目でスピードを競う競技です。
最初はジョギングからスタートして、少しずつ距離が伸びて自転車、スイムへと繋がりました。
十数年ぶりのプールでは、水中ウォーキングから始めました。
5m、10m、25mと泳ぐ距離を少しずつ伸ばして、自分のペースで無理なく続けて1Km、2Kmまで泳げるようになり大会にも参加しました。
これは自分のライフワークだなと思うくらい楽しかったですね。
こんな感じで、「完璧を目指さず、できることから始める」という意識が大切だと思います。
③ 支援を求める勇気も大切
一人で全てを抱え解決しなければならないことはありません。
同僚、信頼できる友人、家族のサポートを受けることは決して弱さではなく、むしろ自分を大切にする行動です。
心理学の研究でも、他者からのサポートはストレスを和らげ、行動を起こしやすくする効果があるとされています。
不安を言葉にすることで、自身の考え方や精神状態を見つめ直すきっかけにもなり、新たな気づきを得ることができたりします。
ある人が、仕事上での人間関係に悩み誰にも相談できず、ご自身の中でかなり追い詰められた状態になっていました。
カウンセリングを通じて、その人は「弱音を吐いてもいいんだ」「人に言ってもいいんだ」「自分一人で解決する必要はないんだ」と気づき、同僚や友人、家族に話をすることができました。
そのお陰で気持ちも楽になり、具体的にどうするのかアドバイスを貰い、次の行動に移すことができました。
④未来をポジティブに描く
「イメージ・トレーニング」を使って、成功した未来を具体的に想像し脳内でシミュレーションすることも有効です。
脳は現実と想像を完全に区別できないため、ポジティブな未来像を思い描くことで、不安を減らし行動への意欲を高めることができます。
具体的な実践方法としては、静かな場所で目を閉じ、リラックスします。
一歩を踏み出した後の成功した自分の姿を、できる限り詳細にイメージします(表情、周囲の状況、感情など)。
そのイメージを紙に書き出して日々眺めたり、成功した自分の姿を日々イメージすることを繰り返し意識に刷り込みます。
⑤自分を責めず、進む勇気を讃える
最後に重要なのは、「完璧でなくてもいい」という考えを持つことです。
一歩を踏み出したこと自体が素晴らしい進歩であり、たとえ失敗してもそれは次の成功への貴重な経験になります。
私たちは誰もが迷いや不安を抱えながら生きています。
それでも、一歩を踏み出すことで人生の可能性を広げていくことができるのです。
先ずは、ちょっとやってみようかなくらいの気持ちで、考え過ぎず、先ずは「一歩」を踏み出してみましょう。
どんな小さな一歩でも、それは新たな道の始まりです。
その一歩を踏み出せた自分を、心から誇りに思ってください。
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